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捨て犬

第20章 涙出てきちゃいました

けど仕方ねぇよな
これしかないんだろうし・・・

なんだか
不恰好ではあるが
全てのパーツを装着した俺は
休憩所から出て店に顔を出した


と、その瞬間
おばさんの笑い声が
店中に響き渡った


「あらぁ〜
あははは(笑)
カズマくん、
似合うじゃないのぉ~」

「ちょっと待って下さいよ
似合うって言いながら
笑ってるじゃないっすかぁ〜」

「あははは
だって
ぶっかぶかなんだものぉ(笑)
ちょっとちょっと
エミちゃん見て見て〜」

おばさんが
奥に居るエミを
手招きして呼ぶと
他のバイトの子や
おじさんまで
売り場に出てきてしまった

「わぁ!あははは(笑)
やっだ
子供が着てるみたい~(笑)」

確かに
俺より10センチも背が高くて
体格のいい萩原が着てた衣装だ
自分でも着ていて笑えた

「髭だよ
髭がでかいんだよ~

いやいや
帽子もでっかいから
顔、隠れちゃってるし~

あははは(笑)」

みんな楽しそうに
俺を見て
げらげらと笑いはじめ
それを見てる俺まで爆笑
あっという間に
店中が笑い声と
笑顔でいっぱいになった

笑顔っていいな
本当にみんな
幸せそうだ


そうだエミは?
エミはどこにいるんだ?


みんなが爆笑する中
俺はエミを探した


あ、いた


エミは
みんなの後ろの一番端っこで
ちょっと隠れて立っていた

また
あんなとこに隠れて・・・


俺が
ちょっと背伸びして
エミの顔を覗くと
少しうつむいてる
エミの顔が見えた


えっ

ほんとに?




恥ずかしそうに
ちょっと
うつむいてるけど
エミは
笑顔で俺を見ていたんだ



ちょっとだけ
白い歯を見せて

今まで
見たことのない
笑顔で


笑ってる

エミが
笑ってるよ!


エミが…
あのエミが…

エミが…っ…

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