テキストサイズ

果てない空の向こう側【ARS】

第2章 長男・智(ゲージツ家)

智「よう。」


俺は商店街のテナントビルの二階にある長瀬の店に入った。


洋服や帽子やアクセサリーが、ところ狭しと並べられていた。


長「おう、智。」


店の奥から長瀬が顔を出した。


平日の夕方、店内には大学生風の男の客が一人で服を選んでいた。


長「これ、今月分。」


長瀬は俺に売り上げの入った封筒を渡した。


俺は中身を確認すると、長瀬が差し出した受領書にサインをした。


アクセサリーはたくさん売れる訳でもなく、売り上げはおそらく高校生のアルバイト代にも満たないくらいだ。


1ヶ月にひとつも売れないこともある。


俺は封筒をジーンズのポケットに突っ込んだ。


服を物色していた大学生風の客が、レジに選んだ服を数点持って来た。


長瀬は会計をして品物を袋に入れて渡した。


長「ありがとうございました!」


客が支払った額は、俺の売り上げより多かった。


店内に客はいなくなり、長瀬と俺の二人だけになった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ