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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

ジー「楽しい家族ですね。」

母「賑やかでしょ。なんせ、男ばっかり五人だからね。」

ジー「私はひとりっ子なんで、新鮮です。」

洗った空き缶を袋に入れていたら、袋がいっぱいになった。

母「結婚したら、神戸に住むのよね? 潤も、東京の店には戻らないの?」

母さんが、ちょっとさみしそうな顔をした。

潤「神戸に住むよ。東京には戻らない。」

母「そうよね…。母さん、神戸に行ったことないから、行ってみたいわ。素敵なところでしょうね。」

母さんは、ちょっと目尻をふいたあと、笑って見せた。

潤「神戸はすげえいいところだよ。動物園にパンダがいて、整理券なしで見られるんだよ。」

ジー「何の話よ?」

母さんとジーが大笑いした。

潤「何がおかしいんだよっ!」



東京から神戸に帰ってすぐ、入籍した。

来月には、俺のアパートを引き払ってジーの工房に住む。

休みの日には、海まで行った。

税関の横を抜けて港まで行って、外国の貨物船をながめた。

港は静かで、たまに釣り人が糸を垂れてるだけだった。

神戸空港から飛び立つ飛行機が頭をかすめる。

神戸に来るまで、こんな時間の使い方をしたことなかった。

潤「なあ、ジー。」

ジー「なに?」

俺はジーを抱き寄せキスをした。

ジーは、もう震えなかった。

【ワンダフル・ワールド(潤)おわり】

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