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隣人は狼系男子っ!

第1章 だって!ずっと好きだったんだもん!

自転車を走らせること15分。

ひなのが嫌なことがあるといつもやってくる場所……海沿いの公園へやってきた。

潮風がひなのの柔らかそうなセミロングヘアをなびかせる。

「ばかやろー!!」

海岸から大声で叫ぶ。

これがひなののストレス解消法であった。

内弁慶な彼女にはぴったりな方法である。

古臭い手法だと自身でも思っていたが、腹の底から叫ぶというのは思ってる以上にすっきりする。

まるで腹の底に沈殿した黒い感情が、大声とともに海に溶け出すように感じた。

「はぁ、すっきりした! 東京行ったらしばらくこれはできなくなるんだよな……」

夕日に照らされて、ひなのの茶色の瞳もオレンジに染まる。

いつまでもくよくよなんてしてらんない!

「がんばるぞー!!」

最後にもう一度、海に叫び、すっきりしたひなのは、また自転車を漕いで自宅へと戻っていった。

その足取りは、まるで春風のように軽やかで軽快であった。

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