方位磁石の指す方向。
第1章 scene 1
「はよー。」
「ねぇ聞いてよ!」
たばこ屋の角から出てきた雅紀。
挨拶を返さず、
急に本題に入る。
「潤くん、マジでいい子!
やばいんだよ!」
「落ち着け。
なにがやばいんだよ。
いい子ってのは
いいことなんだろ?」
「そーなんだけどっ「落ち着け。」
雅紀はふーっふーっと
長く深く深呼吸をする。
…大袈裟。
俺が苦笑してたら、
智くんと二宮が歩いてきた。
二宮は俺たちを見るなり
笑顔になって駆けてきた。
智くんはスローなまま。
「翔さんおはよっ」
「おう、おはよ。」
俺の隣を陣取って、
昨日はありがとって
キラキラ輝く笑顔を
俺に向ける二宮。
それに雅紀が割り込んできて、
「俺も話すー!」
って。
一瞬だけど二宮と離れた。
そのとき、二宮の顔は
ちょっと歪んでて。
「相葉さん邪魔っ!」
「うぇーん、智~!」
智くんに近付いて、
ぎゅっと抱き締める雅紀。
…あ、やっぱり……。
最近、気付いたことがある。
智くんは雅紀が好きだ。
抱きつくくらいのスキンシップは
雅紀なら普通なんだけど…。
この頃智くんは雅紀に抱きつかれる度、
顔を真っ赤にしている。
……知ってる。
智くんが雅紀を好きなことくらい。
自分の、気持ちにも。
「…翔さん?」
「…ん?」
「具合、悪いの?」
心配して訊いてくれた二宮に
俺は曖昧な返事しか返せなかった。