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方位磁石の指す方向。

第8章 scene 7

櫻井side


…全然、既読つかない。

おかしい。
もう帰ってるはずなのに。


……寝ちゃったのかな。

それとも、勉強…?

いや、二宮に限ってそれはないから
ゲームか寝たかどっちか。


…やっぱり、
俺たちにはまだ壁があるのか…?


学年が違うってだけでも、
かなりキツいのに、
登下校も一緒にできなくなれば、
さすがに二宮も辛いよな…。

お、俺だって……
好きでこんなことしてるわけじゃなくて、
仕方ないことだから…

受験生…

進学か、就職か。
誰でも迷うはず。


でも進路なんてもんは、
大体決まってる。


~♪


びっくりして、
スマホの画面を見れば、
智くんからだった。

…まさか、二宮になにかあったのか…?


冷や汗が背中を伝う。

…いや、でも。
そんなはずはない。

だってこんな時間に…。


「…もしもし」

『あ、翔くん。
ごめんね、こんな時間に。』

「ううん、大丈夫だけど…
どうかした?」

『んーと、単刀直入に聞くけど、
和也となんかあった…?』

「っえ、特にはないけど…
どうかしたの?」

『んー?なんもないならいいけどさ…?
急にバイトしたいとか
言い始めたから…なにかあったのかな、って。』

「バイト…?」


…なんで、急に…?


『うん。
まあ別に母ちゃんも父ちゃんも
許してるみたいだし
こっち側的にはオッケーだけどさ…

翔くんはいいの?』

「…いい、って…なにが…?」

『…距離感とか、温度差とか…
気にしてない?』

「…あぁ、大丈夫だけど…」

『そう?
じゃあいいよね。バイト。』

「うん、いいよ。」


したいこと、
やらせてあげたいから。

学生の時にしかできないことを、
思いっ切りした方がいいと思う…。


でも、

なんで…相談もなしに、急に…?

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