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方位磁石の指す方向。

第8章 scene 7






「たっだいまぁー…
っあー、つっかれたぁ。」


おばさんはパートでいないみたいで、
おじさんもまだ帰ってないみたいだ。


「さみぃさみぃ。」


リビングに行けば
当然、智が首だけ出して
コタツに潜り込んでいた。


「おいっ」

「いてっ…!なんだよ!」

「ただいまっつったんだから
おかえりって返せや」

「…おかえり」

「ふふ、」

「んだぁ?気持ち悪ぃなあ?」

「ふふ、俺さ、バイトしよっかなーって
思っててさ?」


んぁ?って欠伸しながら
潤くんからもらった
チラシを手に取った。


「ふーん、いーんじゃねぇの?
和がやりてぇなら別に。」

「マジ?
じゃあやろっかなー」

「バイト代入ったら
なんか奢ってくれよな。」

「やだ」

「なんでだよぅー。」

「働かざる者食うべからずって
よく言うだろ。」

「俺はまだ学生だーぃ」

「俺もだわ。」

「うー…。」


和のケチって言いつつ、
持ってるチラシは離さない。

まさか…


「智も興味あんの?」

「…は?」

「バイト。」

「んなもんねーよ。
まあ確かにちょっとあったりはするけど…」

「どっちだよ笑」

「まぁな?
人手不足って書いてあるから
俺がやってやってもいいかなーみたいな?」

「雇ってもらう側のくせに
随分偉そうだな。つーか…」


お前進路どうすんの。


そう聞けば、

もう決まってるー

なんてゆるーい返事。


…マジかよ。


「どこ?
やっぱ美大?」

「わかってんなら聞くなや笑
そこしかねーだろ。」


あー、さみぃさみぃって
言いながら、
智はまたコタツに潜り込んだ。

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