方位磁石の指す方向。
第8章 scene 7
二宮といる時間が、
もっと長く続けばいいのに。
何度そう思ったことか。
「…もう帰るのか?」
「うん。だって智からメール来たし。」
「……」
「ふふ、そんな顔しないでよ。
またすぐに来るよ。…2日以内には。」
「だめだ。」
「ふぇ?」
「明日も、来いってこと…」
それを伝えたら、
二宮は少し顔を赤くさせて
うん
と少し上擦った声を出した。
「じゃあ、またね。翔さん。」
「あぁ、…ほんとに送っていかなくて
大丈夫なのか?」
「ぶふっ…大丈夫だって笑
そんなに離れてないでしょーが。」
「だけど…暗いし…」
「そんな暗くないってば。」
「…でも、」
俺に呆れた二宮が
「じゃあ電話しながら
帰るってのはどーよ?」
「…お前、天才か?」
「ふふ、天才」
二宮が愛らしく微笑み、
じゃあねって手を振る。
結局、歩きながらのスマホは
危ないってことで却下。
その代わり明日は、
朝一緒に登校することになった。
登校時間の早い俺に
わざわざ合わせてくれるらしい。
なんて健気なヤツなんだ…。
俺ばっかりが好きなんじゃなくて
本当によかった。
二宮もちゃんと
俺のことが好きでいてくれる。
…やっぱり俺は、
二宮が好きなんだ。