方位磁石の指す方向。
第9章 scene 8
「翔さん、喉乾いた。」
「翔さん、ゲームしよ。」
「翔さん、」
「だああっ!!」
これじゃ家にいるのと
丸っきり同じじゃねえか。
「どーしたの?
急に大きな声出して…」
「いや、あのねぇ…」
ん?って首を傾げるその仕草に
きゅんっとしつつも、
いやいやいや、と首を振り。
「あのな、二宮。」
二宮の肩を掴み、
周りの騒音を無視して、
「?」
いまだに状況が理解できていない
二宮は放っておいて。
ちゅ、と短いリップ音がして、
唇がゆったりと離れる。
「……へ?」
「いやあのね、ムード。」
「ゲーセンでキスしてる時点で
ムードもクソもないと思うけど…」
「黙りなさい。」
二宮の口をぱふっと手で押さえ、
もう一度キスをする。
「あの、ここ…」
「死角になってるから、」
「そういう問題じゃなくて…」
「なに?」
「公共の場でこういうことするのは、
…ちょっと、てゆか、
かなり抵抗がある…から。」
頬を赤く染めて、
視線を落とす。
…か、可愛い…
「ごめんな?」
「…んーん」
途端、微妙な空気が流れ始めた。