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方位磁石の指す方向。

第10章 scene 9

二宮side



ふたりで帰ろう。

そう言われたから、
下駄箱の前で待っていた。

なのに、
翔さんは全然来ない。


せっかく潤くんと相川の誘いを
断ったっていうのに、
時間に遅れてくるなんてひどい。


ふうっと溜め息を吐いてから、
もう帰っちゃおうかな。なんて
思ってしまう。


「…あれ?」


俺の下駄箱の中に、
ラブレターらしきそれは
ちょこんと置いてあった。

…いまどきラブレターとか、
古風なヤツ。

なんて思いつつも、
ドキドキしながら
封を切った。


女の子らしい綺麗な字。

ちゃんと読みやすいように
配列を考えてある。

しかも、これまた女子の特徴の
色ペン。

でも見づらくない。

ちゃんと考えてくれてるんかな。


好きです、だって。


ふふ、
残念だけど、
俺には翔さんがいるんだ。

だから、君の気持ちには応えられない。


名前を見てみれば、
全然知らない子。

…名前も見たことない。

先輩?

…ていうか、
入学式に堂々と告白するのは
キツいにしても、
なんでこのタイミングで告白なんて…


俺が考えを巡らせていれば、
直に翔さんは来た。


「ごめんっ、ほんっと…」

「おっそいなぁ、もう…」


ちょっといじけたフリをすれば
ごめんごめんって
俺の頭を優しく撫でてくれる。


「あのね、翔さん…
俺ラブレターもらっちゃった」


帰り道、一応報告すれば、
途端曇る翔さんの顔。

…あ、そういうわけじゃ、
なかったんだけどな。


「あっあの!違うよ?
だから別れようとか、
そういうんじゃなくてね…?」

「…わかってるよ。
二宮が俺から離れてくなんて
思ってないから…」


少し、寂しそうな顔をして
俯いてしまう。


…あ…やっちゃった…

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