テキストサイズ

方位磁石の指す方向。

第10章 scene 9






「帰ろう。」
って言われたから、
翔さんのあとをついていく。


…そういうわけで、言ったんじゃ
なかったんだけどな…。


悶々と考えてしまい、
翔さんとの会話も相槌だけ。

そんな俺を見て、翔さんが、

「…そんなにつまんない?」

って。


そういうわけじゃないよ。

ただ…ただ、罪悪感が半端ないから…


「…ねぇ、翔さん…ごめんなさい…」

「っ…いいから、もう…」


ちょっとだけ眉を下げて、
立ち止まった俺の頭を撫でてくれる。

そんな翔さんの気遣いにも、
きゅんっときて。

目の前の胸に飛び込んだ。


ごめん、って言いながら。

だって、怒ってるかと
思ったんだもん…


そんな顔、しないで。

不安に、なる。


「…あのね、そういうわけで
言ったんじゃないから、ほんとに…」

「いいよ、大丈夫。
わかってるから、ね?」


二宮、大丈夫。って
頬を撫でてくれる。

それだけで泣きそうになってしまい、
そんな顔見られたくなくて
翔さんから顔を背けた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ