方位磁石の指す方向。
第10章 scene 9
二宮の細かい仕草にも、
いちいちドキドキしている。
今この瞬間も、
目を瞑った二宮を前に、
ドキドキして、行動出来ずにいる。
「……キス、は?」
小さな声で、
薄い唇で。
発せられた声は、
いつもに増して、脳が蕩けそうで。
俺がキャパオーバーする前に、
さっさと済ませてしまおう、
なんて思っていたのに。
「…翔さん、うち、来る?」
…なぁ、
どうしてこうもお前は、
俺の心を揺さぶるんだ…?
お願いだから、
これ以上期待させないでくれ。
これ以上、俺を動揺させないでくれ。
「今日…は、智もいないし、
親も、帰り遅いから…」
きゅ、と服の袖を掴まれ、
二宮の方を見れば。
潤んだ瞳が俺を捉え、
唇は微かに震えていた。