方位磁石の指す方向。
第10章 scene 9
「翔さんっ、おはよっ」
語尾にハートマークが
つきそうなくらい、
俺へ懐いている二宮。
「あぁ、おはよう。」
…触れたい。
手なんか、頬なんか、
そんなんじゃ足りない───
「あのね、昨日智にシュークリーム
とられたんだよっ、
ほんとひどいと思わない?」
もっと奥まで、知りたい。
「ふはっ、いちいち怒んなくたって
いいじゃん?
今日帰りコンビニで買おうか?」
「うぇっ、そういうわけで
言ったんじゃないよ〜っ!」
慌てる姿が、可愛くて。
…全部、俺だけのものにしたい。
深くまで、愛し合いたい。
「っ、翔さ───」
満たされない俺は、
キスでなんとか足りない部分を補う。
「…ごめん。こんなとこで…」
一応周りに誰もいないのは
確認したけど、
二宮は前、外でするのは
抵抗があると言っていた。
…でも俺は、…最低な俺は、
二宮の素振りが見たかったんだ。
「もっ、恥ずかしいって…」
「学校行く前の糖分補給。」
糖分補給、とでも
題しておけばよいだろう。