テキストサイズ

方位磁石の指す方向。

第10章 scene 9

二宮side



言われた言葉が、
頭の中で響いている。

嬉しいだけじゃない。

幸せ、なんだ。

翔さんといるだけで
幸せだったけど、
そこに甘ーい言葉がつくと
余計に幸せになれる。

…翔さんは、不思議な人だ。

どんなに俺が、
可愛くない返事したって
態度をとったって、

好きなことには変わりはない。

だなんて。


とてもありきたりな
セリフなはずなのに、
俺は嬉しくなってしまうんだ。


「…うん、俺も…愛してる…」


少し照れたような顔した翔さんが
また俺を抱き締めた。

その広い腕に抱かれ、
顔が緩む。


「…二宮んち、行こっか。」

「…っ、うん…」


俺から誘ったんだと。

意識した途端、
恥ずかしくなってきた。


──でも…

もう、言葉だけじゃ
俺はどうも足りないんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ