
方位磁石の指す方向。
第10章 scene 9
「────っあ、」
部屋に招き入れた途端、
翔さんに抱きつかれた。
ぴくん、
と肩が揺れる。
やばい、やばい───
今更ながらに、
この距離感にドキドキしている。
…これっ…ほんとに、俺…
もつ、かなぁ……
「…こういう、こと…?」
そっと、翔さんの腕に
手を重ねてみた。
そうしたら、
さっきよりもキツく抱き締められて。
…そのまま、時間が止まったように
空気が動かなくなる。
「…ぁ、しょ、さっ…」
「…かわい。」
ちゅ、と頬にキスされ、
にっこりと微笑まれ。
また胸が高鳴り出す。
とくん、とくん…
小さく、でも、ハッキリと
聞こえてる。
翔さんにも…聞こえ、ちゃう…。
そう思ったら、
恥ずかしくなって
顔を背けてしまうんだ。
そんな俺の態度が
気に食わなかったのか
無理矢理頬を掴まれた。
「っ……」
浮ついた態度しか取れない俺に、
翔さんがそっと体を離す。
違う、そういうわけじゃない…。
そう伝えたかったのに。
「…ごめん、ガッツキ過ぎたよな…」
「っえ…?」
…なんで、
そっちが謝るの…?
俺が曖昧なことしてるから、
困らせてるだけなのに───
…あぁ、もう…
こうやって俺はまた、
翔さんに惚れていくんだ。
