方位磁石の指す方向。
第10章 scene 9
気が付けば、辺りは日が落ちていた。
「…二宮、帰る…」
「…っ、待って……」
下半身素っ裸の二宮が俺の腕を引っ張る。
頬を紅潮させて、気まずそうに目を逸らす。
「あのっ…今日は、ほんとにありがと…
なんか、その…愛され、てるな…て、
実感できた…から…」
途切れ途切れだけども、
しっかりと伝わるその声。
「────二宮」
俺が名前を呼べば
やっとこっちを見てくれた。
顔を真っ赤に染めて、
眉を少しだけ眉を顰めて。
「…お前のこと、すげー好き…」
二宮の肩にコツンと額を乗せて
そっと呟いた。
長いこと、そうしていた。
体を離すと、顔を余計赤くさせた二宮が
ぽろぽろと涙を流していた。
ありがとう、だなんて言いながら。
そんな二宮を抱き寄せて、
俺もありがとう、なんて言う。
「俺も好きだから、な?」
「うん、うんっ…」
二宮の泣き笑いは、
いつまでもいつまでも続いた。