方位磁石の指す方向。
第11章 scene 10
『でもっ…』
そんな空気を掻き乱すように、
『俺は翔さんのこと、好きだからっ…
だから、お願い、ひとりにしないで…』
震えた二宮の声は、
俺の鼓膜にまで響いた。
『────愛してる。』
「っ……」
言葉が、詰まる。
空気が動かなくなって、
世界に置き去りにされているような。
「…俺も、お前のことが好きだ。
バカみたいに好きだ。」
『…翔さん……』
「もしお前が今日みたいに
不安になったらいくらでも言う。
俺はお前が好きだ。
どうしようもないくらい好きだ。」
俺の想い、これで伝わるかな。
緊張して、なかなか伝えられない。
いつも、どんな風に伝えてたっけ。
『ぅんっ……』
嬉しそうな声が耳元で響く。
……よかった。
ちゃんと、伝えられたんだ。
「…明日も、一緒に帰ろう?」
『うん、』
「お昼も誘いに行くから」
『うんっ…』
本当は今すぐ、
震える二宮を抱き締めてあげたいけど。
そんなこと、
今の俺達にはできないんだ。