
方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
「失礼しまっす。」
そろっと二宮の部屋へ入れば、
スマホをいじってる二宮。
「…翔さん…?」
ちらり、と画面から目を離して
俺の方を一瞬だけ見た。
そしたらすぐに、
目を逸らされた。
「……怒ってる?」
「…別に。」
とか言いつつ、
視線を合わせてくれない。
ちょっとだけ
唇を尖らせて、目つきを鋭くしてるけど。
俺から見たら可愛さの塊でしかないし、
そもそも自分の可愛さに無自覚だし、
夏なのに微妙に萌え袖になってるし。
「…可愛すぎかよお前…」
「は!?何言ってんの!キモい!」
ズバッと言われたけど、
そんなの気にしない。
「なー二宮ぁ。」
「うるさいです。」
「おーい、二宮くーん」
「うるさい…」
「……和也?」
「っ…は!?」
動揺を隠せないのか、
思いっきり目を見開いてこっちを見る。
「かっ、かかか和也?」
「焦り過ぎか笑
ほんと可愛いな、お前。」
よしよしって頭を撫でたら
「子供扱いしないでよっ」
なんて口聞く。
いつもは、
「えへへ。」
なんて顔を赤くしながら
幸せそうにしてるくせに。
