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方位磁石の指す方向。

第2章 scene 2

二宮side



『おやすみ』って返信したのに。

寝れない。


むしろ、頭が冴えちゃってる。

翔さんのことを考えるだけで、
胸がきゅって締め付けられる。



LINEの『櫻井翔』の文字を見ては、
画面を優しくなぞる。

アイコンがサッカーボール。

…そんなところも好き。



すべてが愛おしく、
輝いて見える。

それは、翔さんのおかげ。



「…ふぅ、」




声が聞きたい。

恋人でもないのに、
こんな時間に電話をするなんて、
おかしいのかもしれないけれど。



一回恋したら、
もう止まれない。



「…よし」




通話ボタンを押して、
呼び出し音が鳴る。


と同時に、LINEの通知音。



なんでこのタイミングに…。
とか思いながら、
舌打ちをする。



『もしもし?』

「しょ、さ、」

『んー?』

「あ、の、やっぱり明日、
会いたい、です…。」



電話越しに伝わる、
翔さんの息遣い。


息吸ってる音と、
吐いてる音。


それを聞くだけで、
幸せになる。



今この時間、
翔さんと時間を共有してる。

翔さんを独り占めしてる。



擽ったいような、感覚。

幸せを噛み締めている、
今この瞬間。



『それのことなんだけどさ、
今LINEしたと思うんだよね。』

「えっ、ほんと?」

『あぁ。明日塾なくなったからさ、
駅前で、待ち合わせな。』

「…うん。」



嬉しくて、息が上がる。

電話越しなのに、
すっごい恥ずかしい。



「…じゃあ、また明日。」

『おう。』




ほんの一瞬だった。
翔さんとの会話は。

もう終わっちゃった。



…でも、名前呼んでくれなかった。

あーあ…


脈ナシ、かなぁ。

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