方位磁石の指す方向。
第2章 scene 2
そう言えば、一目惚れだった。
人目見たときから、
好きになってた。
と思う。
いつの間にか、翔さんのことを
目で追っていた。
いつも、翔さんが隣にいた。
『翔さん』が口癖になってた。
…自惚れなんかじゃないよね。
翔さんだって、
きっと、俺のこと…。
明日、駅前で待ち合わせ。
…なに着てこ。
てか、話だけ?
…。
デート、だよね。
これって。
翔さんからしたら、
ただの遊び?
「…ふぅぅ」
息を吐いて、
ゆっくり息を吸う。
そんなことを何度か繰り返して、
俺は眠りについた。
スマホを握り締めたまま。
とても、とても、
幸せな夢。
母さんと父さんがいて、
俺の隣で微笑む。
温かくて、柔らかい。
あぁ、会いたいな。
もう会えないのに。
『和、頑張れ。』
母さんと父さんが、
そう言った。
俺の背中をトンっと押して、
俺の視界は暗くなる。
母さんと父さんは、
もういない。
「っ……!」
自分が泣いてるので、
起きてしまった。
ひさしぶりだ。
母さんと父さんの夢を見るのは。