方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
とん、とん、とぶつかる右手。
わざとぶつけてきてるのか、
それとも距離が近いからなのか。
「…手、繋ごっか。」
「っ…うん、」
…繋ぎたかったんか。
やっぱり俺、鈍いな。
「……あの、さ、」
「…うん?」
余計なことは、言いたくなかった。
だけど、これ以上見てられないから。
「…悩みとかあるなら、言えよな。
俺は一応お前の恋人なんだし、
何でも言って欲しいんだよ、ほんとに。」
伝われ。
二宮は俺の顔を凝視して、
立ち止まってしまった。
「…うん、わかってる。」
「…おぅ。」
…空回り?
再び歩き出そうとする二宮の腕を取り、
視線を合わせた。
「言えよ、」
「…っ、」
「なんか、あんだろ、わかってんだよ。」
ぶっきらぼうで、キツい口調で。
こんなの、言えないに決まってる。
「……俺、」
「あぁ、」
「…友達、大切に出来てるのかな…。」
ぽつり、と放たれた言葉は
予想外の言葉過ぎて、
理解するのに時間がかかった。