方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
それっきり何も喋らなくなった二宮。
俺に身を委ねて、
安心し切っている。
うとうとしかけていたとき、
不意に唇が触れた。
「…どうした?」
「…キスしたくなっただけ。」
「あそ。」
「うん。」
こんな空間が、
今は何よりも大切なんだ。
二宮の傷を癒すことが、
一番だと思うから。
「…あ、そろそろ帰らなきゃ。」
「あー、もうこんな時間か。」
時計を見つめ、溜め息をつく二宮。
…家族関係?
…いやいや、
あの家だからそんなことは───
いや、どうだ…?
意外とああいう方が疲れるのか…?
家族と過ごすことが少ない俺には
わからない悩みだ。
…いや、もしくは別?
一体なんだってんだ…?
「…じゃあ、翔さん、俺帰るから…」
「…あぁ、」
「うん、またね。」
「は?送るし。」
こんな時間に二宮みたいな
可愛い子が一人で歩いてたら危険だ。