方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
帰り道。
長い長い沈黙のあと、
うるさすぎる音が響いた。
「あ…。」
「お、始まったんだな。」
ぱっ、と当たりを染め上げてから、
散っていく。
光って消える瞬間が、
一番好きだったりする。
「…なんか、終わっちゃったって感じ。」
「花火が?」
「んーん。」
「なんだよ〜。」
…だって今年は、
楽しすぎて過ぎるの早かったもん。
翔さんのおかげだ。きっと。
「なんか、呆気ないじゃん。
あんなにざわざわしてて
楽しい雰囲気だったのにさぁ、
花火が終わっちゃえば
『はい終わり』なんてさ…儚いね。」
「…まあなぁ。」
なんか、寂しくなるじゃん。
置いてけぼりにされたみたいだ。
「…ねね、翔さん。」
「ん?」
「コンビニ、寄ってこっか。」
「…花火?」
「うん、やりたい。」
子供だなぁ、なんて言いながら、
そっちだってノリノリじゃん?
俺だって、楽しみだけどね。
「ちょ、待ってよ。早い早いっ」
「売り切れちまうだろっ、ほら、」
「売り切れないからっ、もー!」
たたっと駆け出した翔さんを追いかける。
生ぬるい夜風が、俺の頬を撫でた。