
方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
「…やだぁ。」
認められないって、
わかっていても。
「しょぉさんと、ずっといっしょがいいよぉ…」
離れたくないから。
だから、もっと。
体、くっつけたり、キス、したり。
もっともっと、一緒にいたいよ。
「…俺もだよ…」
痛いくらい抱き締められた。
でも今は、それが心地いい。
「……」
「……」
お互い、黙ったままで、
何も喋れない。
俯いたままで、
でも、体だけは向き合っている。
繋がった手のひらも、
もうぐしゃぐしゃだ。
「「あのさ、」」
同時に上げた声と、顔。
ふたりとも、予想外でぷっと吹き出した。
「いいよ、和也からで。」
ふわ、といい匂いがした。
翔さんの匂い。
「…う、うん…」
ねぇ、翔さん。
こんなこと言ったら、怒られないかな。
「…もう、花火はいいや…
早く、帰りたくなってきちゃった、んだよね。」
俺がこんなとこまで連れてってって
言い出したのにね。
「まぁじでぇ?」
…やっぱりだ。
怒られちゃうかな。
「俺も、同じこと思ってたんですけど笑」
「っえ…?」
「やっぱ俺ら、気ぃ合うね。」
ははっと笑い、「じゃあ帰ろ」って
あっさりと言い終えた。
…なんだ。……ふふ。
「うんっ、帰ろっ」
ぐしゃぐしゃだった手のひらを繋ぎ直して、
お尻についた砂を払いながら。
「ねぇ、俺ってさ、
やっぱり運命の出会いだったんだよ。」
「ふは、あったりめぇじゃん。
なに、今更?」
「んふふっ、違うよ。
改めて実感しただけー。」
