方位磁石の指す方向。
第15章 scene 14
松本side
最近の和はやっぱりおかしい。
無理して笑ってるし、
声が笑っていたとしても
目が笑っていない。
心の底から笑っているとは
到底思えない。
「…和…」
心配、なんだ。
高校入ってから初めての友達で、
初めてこんなにも仲良くなれてヤツ。
俺は、和に何も出来ていない。
授業中。
たまに和は、切なそうに目を伏せたり、
退屈そうに教科書を捲っている。
そんな姿を見ていると、
何だかいたたまれなくなる。
俺はこんなにも非力なんだ、と
嫌でも実感する。
和が「大丈夫だよ」と
言う度にできる引き攣る口元。
…もう、見たくないんだ。
だけど俺は、やっぱり何も出来ない。
俺は和を助けられない。
助けを求めない和には、
もうどうやったって近付けない。
「…友達って、なんだろうな…」
ぽそっと呟いたその言葉は、
遥か彼方の空へと吸い込まれていった。