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方位磁石の指す方向。

第15章 scene 14




そんなことを思い出したら、
また泣き出しそうになる。

意識していないのに、
涙が溜まって。


「…和、そろそろ行こう?」

「……うん。」


そんな俺の気持ちを知ってか知らずが、
潤くんは俺に声をかけてくれる。

わざと、明るい声を出しているのも
俺にはわかってるよ。


「…ごめんなさい…。」


心配かけて、迷惑かけて、
ごめんなさい。


「ん?どうした?」

「ん?なんでもないよ、」

「…そう?…あーそういやさ、
テスト勉強してる?」


きっとこれも、
俺のことを思って
話題を振ってくれてるんだ。

…気まずくならないように。

俺の翔さんへの気持ちを、
少しでも減らしてくれてるんだ。


「…んー、ぼちぼちかなぁ。
あんまりやる気起きなくてさ…」

「そっ、か…。だよな。
俺も全然だよ。」

「えぇ、でも潤くん、
頭いいじゃん。要領いいの羨ましいよ。」


俺がははっと乾いた笑い声を
また出せば。

ふいに見た窓ガラスに
切なそうな潤くんの顔が映った。

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