方位磁石の指す方向。
第2章 scene 2
「なんとなくって……そんな…。」
「しゃーねえじゃん。
智くんと雅紀のあんなとこ見たらさ、
耐えられねえってーの。」
「……。
気持ちなんて、なかったの?」
「さあね?
自分でもよくわかんねえーし。」
俺がそう言ったら、
二宮の目に涙が浮かんだ。
「…い。」
「え?」
「嫌い、です。」
それだけ言い、俺を睨み、
二宮は頬を叩いた。
ピリッとした痛みに襲われる。
慌てて頬を押さえた。
二宮は泣いていた。
「なんとなくって…なんだよ。
ふざけんな…っ!!」
二宮は拳を強く握り締めていた。
「にのみ「声なんて聞きたくない!」
…あぁ、どうして俺はこう、
いつも素直になれないんだろうか。
二宮が走り出そうとした。
「待てよっ」
二宮の腕を掴み、
無理矢理こっちを向かせた。
「…ごめん。
今だけ許して。」
俺は、
二宮の唇に
優しく自分のソレを重ねた。
唇が離れると、
二宮は静かになる。
「…なんだよぉ…」
踞って、立ち上がることのない二宮。
…あぁ、やっぱりごめん。
「やっぱり俺、翔さんが嫌いだ。」
そう言って、涙を拭う。
「もう、関わりたくない。」
それだけ言って、
とぼとぼと歩き始めた。
話したいことも
まともに話せない関係なんて、
友達って言わないのかもしれない。