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方位磁石の指す方向。

第2章 scene 2

櫻井side



やっべ……。

時間より三十分も遅れた。



なに着てくか迷って、
結局遅刻。


駅前の時計台の下に、
二宮はいた。



「二宮っ!ごめんっ……!」

「あ、翔さん!」



音楽を聴いていたのか、
耳からイヤホンを外した。



「ごめんな、ほんと…。」

「…かった…。」

「え?」

「よかったぁ…。
翔さん、事故にでも
遭ったのかと思ったよ。

おっちょこちょいだからさ?」

「…はは、んなわけねーだろ。」



二宮の背中をトンっと押して、
優しく頭を撫でた。


ふわふわでくしゃくしゃの髪。
いい匂いのするシャツ。


「翔さん、あの…」

「あぁ、話?どこ行く?
この辺だと…
あんまりファミレスとかないよ?」

「…こ、こで、いいです…」

「そう?」



あれ?

そんなに重大な話じゃなさそう?


俺の勘違い?



「…えっと、なんで、キスしたんですか。」

「…それは……」




やっぱり、このことか。


前も聞かれた。

これが喧嘩の原因なのに。



「答えられないなら、
別にいいんです……。

ただ、なんで俺なのか
よくわからなくて……。

もっと可愛い子なら、
他にたくさんいるし……。」

「……なんとなく?」

「え?」


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