方位磁石の指す方向。
第15章 scene 14
でもきっと、ここで拒絶すれば。
「ごめんな」
って謝られる。
それに、
なかなか会えないところに
お互い住んでるわけだし──…
次会えるのは、
いつになるかも分からないし──…
そう考えたら、ねえ?
「翔さんの、好きにしてよ…」
また、可愛くない答え。
そんな俺を見て、
少し嬉しそうに笑ってから
「可愛くねぇなあ」
と一言。
それでも俺を抱きしめてくれる
翔さんの腕が温かくて優しくて。
きゅううっと胸が締め付けられる感覚に、
なぜだか安心感を覚えた。
「…悪かったね」
「ん?」
「可愛くなくて悪かったですね」
また、可愛くない発言。
そしたら翔さんが苦笑していた。
…あっ。
あんまり嫌なこと言いすぎて、
嫌われちゃったかな。
またほら、すぐに後悔。
「そういうのも可愛いんだから、
自覚しろよバカ…」
「へ?ぁ、んっ、」
上に顎をぐいっと向かされて、
唇を雑に重ねられた。