方位磁石の指す方向。
第16章 scene 15
大学に入ってから、
生活が一変した。
それは翔さんも同じみたいで、
随分忙しそうだ。
それに。
「狭い…」
男二人には狭すぎるこの空間。
来た時には大丈夫だと思っていたけど、
趣味も全く違う二人。
ベッドを二個置くスペースなんて
あるわけないから、
セミダブルのベッドで一緒に寝る。
「んー…」
翔さんの寝息が耳にかかる距離。
いつもは擽ったいけど、
今日は鬱陶しい。
そろりとベッドから抜け出して、
厚めのブランケットを探す。
見つけたあとは、
ソファーでごろ寝する。
ココ最近、ずっとそうだ。
翔さんよりも早く起きる俺は、
バレることなくこの行為をしていた。
だけど、
今日に限っては違うみたいだ。
「和也」
「…うん」
いつもと違う声音と表情に
おどおどしながら
翔さんの向かいに体育座りする。
ムッとした顔を見てられなくて、
目を逸らした。
「最近おかしくない?」
「え?」
「なんかお前、変だよ」
いや、ベッドのせいだって。
結局この問題は、
新しく買い直そうってことで落ち着いた。