方位磁石の指す方向。
第16章 scene 15
行為後特有の倦怠感。
翔さんが俺の中を出ていったあとも、
宙を見つめていた。
真っ白な天井をぼーっと見つめて、
余韻を楽しんでいた。
隣の翔さんも、
同じくらいぼーっとしている。
お互い何も言わず、
余韻に浸っていた。
「…ねえ」
その沈黙を破ったのは、
俺からだった。
翔さんからは気怠げな声が聞こえた。
「今までで一番、気持ちよかったかも、」
思ったままのことを伝えた。
あんなにぐちゃぐちゃにされたのは
初めてだった気がする。
俺も翔さんも、
未だかつて無いくらい乱れた。
そして、愛された。
二人の呼吸だけが虚しく聞こえる。
翔さんはああ、だか、うん、だか
よくわからない声を上げてから、
ゆっくりと目を瞑った。
…寝ちゃうんだ。
素面で行為に及んだあとは
絶対に寝ないのに。
「……寝ちゃった?」
そのうち、隣で心地よい寝息が聞こえた。
眠っているのはわかったけれど、
気になって声をかけた。
その寝息を聞いていたら、
俺も瞼が重くなってきた。
深く長く息を吐いてから、
ゆっくりと目を閉じた。
隣に彼がいるという幸せを感じながら。