方位磁石の指す方向。
第4章 scene 4
次の日も、またその次の日も
母さんは怪しい男と
なにかをしていた。
だけど、父さんはそんなこと、
知らないから。
きっと言っちゃいけないこと
なんだろうなって子供ながらに
思っていた。
でも、ある日、
とうとう気になって…
「ねぇ、いつも寝室で
母さんたちはなにしてるの?」
なんて、言ってしまった。
別に、悪いことだなんて
思わなかったし、
ただ単に気になっただけ。
それだけの子供っぽい理由。
でも母さんは、
困ったような顔をして
「大人同士の会議なのよ。」
とだけ言って、
また寝室へ男と行く。
今思えば、俺はきっと
純粋だったんだ。
だって、そこまで
そういうことに興味も
なかったし…。
別に、キスとか手を繋ぐとか
そういうのも意識はしたことなくて。
だけど、キスは絶対に好きな人と
したいっていう願望があって。
「…和也?きーてんの?」
「あ、ごめん。なに?」
はぁって千晴は溜め息ついて
俺の頬をつまんだ。
「聞いてろよっ」
「痛い痛いっ!!」
ギャンギャン騒いでたら
千晴の母さんが来て、
「千晴、帰るわよ!」
って、千晴の腕を
引っ張って、
「お、お母さん!?
どうしたの!?」
あんなに険しい表情の
千晴の母さんを
俺は始めて見た。