方位磁石の指す方向。
第4章 scene 4
そんなことが
あってからか、
俺は人と遊ぶのを、
外に出るのを拒んでいた。
学校なんて、
行きたくなくなって。
かといって
家にいるのも嫌で。
だって、壊れたような母さんと
すごい怖い顔した父さんが
朝も、帰ってきてからも
ずっと言い争っているんだから。
ただ、怖くて。
俺のことなんか、
二人とも忘れちゃったみたいに
言い争ってるから。
俺が泣いてても
どんなに叫んでも。
…二人の心にはもう、
俺なんて存在は、
息子なんて存在はなかったんだ。
そう考えたら悲しくて
苦しくて。
外に出るのは避けてたけど、
こんな家にいるのは
もっと嫌で。
マスクをして、
帽子を深く被って。
…いつもいつも、
夜の街に溶け込んでいた。
俺は、いつからか
おかしくなっていた。