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方位磁石の指す方向。

第4章 scene 4






そんなときだった。


母さんと父さんが
死んだのは。

そして、千晴が
引っ越したのも同時だ。


もう、ワケわかんねえって。



…意味、わかんねえよ。


急に消えた三人。

優しくて、可愛らしい母。

頼りになって、かっこいい父さん。

明るくて…俺の好きだった千晴。


みんな消えた。





…俺はひとりぼっちだ。

どこにいても
変わらないんだ。




告別式が終わったあと、
従兄弟から、

「和、俺んち来いよ。」

って言われた。



…それが智だった。


智の行ってる高校は
少しレベルが高かった。

だけど、なんとか受験して
合格して。

智の家に居候することに
なった。



…いや、智の家族の
一員になった。



俺のことを
知ってるヤツなんて
誰もいないところ。


…なんだ。


……世界って、
こんなにも広いんだ。

ネットの世界は、あんなに
窮屈ですぐに広まる
狭いところなのに。





…俺、ようやく
一歩踏み出せたんだ。

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