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天気予報の恋人

第1章 chapter 1


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出発前に思いきり泣いたかずは何だったのか


目的地である、ここ《泉の里》に着く頃には

かずはもう何の感情も表に出さなくなって、完全に無表情になっていた


ゲームを閉まって、ただ窓の外を見てるだけ

その目は、何も映してないようで


…何もかもを諦めたような醒めた瞳

そのくせ辛そうに時々目を細めている



だけどかずはバスを降りてからも

なぜかずっと、俺のシャツの裾を掴んで離そうとしなくて

目は合わせないし、下を向いてるけどその手は何と言うか必死で



会ってすぐに泣いてくれたんだから

思ったよりは簡単に心を開いてくれるかも、なんて

考えていた俺は


…やっぱりまだ子供だった





「みんな降りたかなー?」

翔ちゃん先生の声に

かずがビクリ、と体を震わせた


そりゃそうだよね

不安に決まってる


俺がそっと頭を撫でると

かずが小さく息を吐いた





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