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天気予報の恋人

第10章 chapter 10



電車を降りて、ホームを歩いていたら

反対側の電車を待つ1人の女の人が目に止まった

ベンチに座るその人は、別に目立ってるわけでもない
…極普通の中年の女性


だけどその人は

俺にしてみたら特別な人で




会いたくないのに、会いたい

顔なんて見たくないのに、…見たい

もう、いないものだと思いたいのに…思えなかった



……俺の、母親



どこかで、期待してたんだ

俺が声を掛けたら



『元気にしてる?』

『会いたかった』



そう、笑顔を浮かべて言ってくれる事を



だから

少し緊張しながらも、俺の方から


「…おかあさん」

声を、掛けた



だけど

声を掛けられて顔を上げたおかあさんは、俺を見た瞬間
…顔色を変えた


「…話し掛けないで」

まるで男みたいに低い、声

「……」

「もう、あんたには…関わりたくないの」

そう言って俺の目を捉えたおかあさんのそれは

「我が子」を見る目じゃなかった







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