天気予報の恋人
第1章 chapter 1
翔ちゃん先生が今回のスクールについての簡単な説明をしていく
だけどここに来た子達に難しい説明なんていらない
だって目的はただひとつ
「心から楽しむ事」
それだけだから
***
「かず、お部屋行くよ」
説明が終わって、皆がそれぞれの部屋に散らばっていった
隣に座るかずに声を掛けて、二人分のボストンバッグを持って立ち上がった瞬間
かずが「やめて!」と言うように俺からバッグを取り返した
その後で
しまった、と言う顔をしたかずは
…優しくされる事に戸惑っているように見えた
「自分で持ってくれるの?」
かずの本当の気持ちは分からない
本当に嫌なのか、遠慮してるのか見分けられなくて
だから普通にそう言っただけなのに、かずは驚いた顔をしていた
怒られる、とでも思ったのかも知れない
「重たいけど、平気?」
態度の変わらない俺に
「怒らないの…?」
かずが怯えたように尋ねてきた
「何で?怒られる事なんかしてないでしょ」
「だって…」
…いつも怒られるから
そう呟いた言葉は
今にも消えそうな位、小さかった
「バッグ、自分で持つ?」
もう一度、同じ事を聞くとかずはしっかりと頷いた
「えらいね」
頭をポンポンとしたら、少し嬉しそうに目を細めた