天気予報の恋人
第15章 chapter 15
嫌な出来事や怖かった出来事は
楽しい事へ上書きさせる
さっきの川に飛び込んだのも、それだった
かずはまだ分からないけど、少なくとも潤は、川への恐怖を打ち消した
今も、楽しそうにリーダーと騒ぐ声が聞こえてきている
俺がかずを散歩に連れ出したのは
…まだ目が怯えていたから
焦らないで、まず落ち着かせる時間を作る事にしたんだ
あの頃と同じように、手を繋いでのんびり歩く
違うのは
繋いだ手の持つ「意味」
あの時は
親ではないけど、保護者の気持ちだった
"守ってあげたい"
ただそれだけだった
今は
"愛おしい"
"全てを自分のものにしたい"
だけど繋いだ手の暖かさは変わらないし
"大切にしたい"のも変わらない
「ねぇ、まーくん」
「ん?」
「…なんでもない」
ふふ、と笑って空を見上げるかずの表情は明るい
少なくとも、今は「闇」は付いてきていない
ここにいる間だけは、忘れさせてあげるから
楽しさだけを全身で受け止めて