びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】
第2章 バーチャルな君と僕
次の日も
次の日も
メールをするのは僕ばかりで
どれだけ待ってもカズちゃんから返信は来なかった
ORIONを投稿しても
東京スヰートを投稿しても
再生回数は増えなくて
カズちゃんは僕の動画そのものを見ていないんだとわかった
『体調でも悪いの?』
『カズちゃん、大丈夫ですか?』
『元気にしてますか?』
カズちゃん…
カズちゃんの身に何かあったんだろうか
それとも
もう僕なんかに興味がなくなってしまったんだろうか
僕とカズちゃんを繋ぐ細い細い糸は、もう…
新しく動画を投稿する気力も
大学やバイトさえも
全くやる気を無くしてしまった
薔薇色だった僕の世界は
途端に灰色へと色を変えていった
「いらっしゃいませ……」
「おい、智。覇気が無いぞ?」
「…へ……?」
「あーっ、もう!どうしたんだよ? 最近変だぞ?
今日はもういいから、帰って休め!」
「はい…すみません、」
食欲もまるで無いし
何も考えられない
自分が今、悲しいのか
辛いのか
不安なのか
そんなことさえも分からなくなっていた
「あの、」
「あ…いらっしゃいませ、」
来客を知らせるベルの音ですら
耳に入ってきていなかった
「お仕事中すみません
サトシさん、ですよね?」
「はい、そうですけど…」
「ちょっとお話があるんですけど」
背の高い、爽やかな男子高校生が
真っ直ぐに僕を見つめてそう言った
「僕に…ですか?」