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ネットに落ちてた怖い話

第57章 逆さの樵面

私の生まれた村はつい先日合併によって閉村し、別の名前の町に生まれ変わりました。

しかし千羽神楽の名は残っています。
室町時代から脈々と続くこの夜神楽は、かつて村の4つの家によって継承されてきました。

稲には実りを、また山には厳しい寒さをもたらす神々を、歓待し楽しませるための舞を踊るのです。

村にある神社を1年間で順繰りに回り、氏子たちが見守る中で夜が更けるまで舞い続けます。

舞うのは4つの家の太夫と、かつては決まっていたようですが現在では1家を除いて家筋の消息が不明となり、若者不足も重なって舞太夫には誰でもなれるようになっています。

もともと4家に神楽を伝えたのは熊野より落着した日野家であると、資料にはあります。

当主であった日野草四郎篤矩がそのとき持参したといわれる神楽面が、のちに村の家々の戸口に影を立たせることになるのです。

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