レット・ミー・ダウン【ARS・NL】
第9章 コッペパン【和也】
会社の昼休み、午前中に経理に回すべきだった伝票を忘れていたことに気がついた。
私は伝票を手に経理課へ向かった。
電気を消された薄暗い部屋に、ひとりの男性社員が座っていた。
◯「二宮さん、これ営業の出張費の支払いお願いします。」
背中を丸くしてコッペパンをかじりながらスマホゲームに熱中していた経理課の二宮さんは、眼鏡越しにチラリと私を見ると、アゴでデスクの上に置かれたトレイを指した。
二宮「そこ入れといて。」
無愛想なその態度に面食らったが、言われるまま伝票をトレイに入れた。
◯「よろしくお願いします。」
二宮さんは私の声など聞こえていないように、ゲームを続けた。
経理課を出るとき、女子社員が戻って来た。
私は念のために女子社員にも伝票のことを伝えた。
「オッケー、昼イチに処理しとくね!」
明るく答えてくれた女子社員が部屋の奥にひとり座る二宮さんに気づいた。
女子社員は私の耳元でささやいた。
「にのみー、暗いでしょ? 昼休みはいつもひとりでゲームやって。本当にオタクなのよ。あれ、きっと童貞よ。」
私は、何て答えてよいかわからず、苦笑いを返して経理課を出た。
私は伝票を手に経理課へ向かった。
電気を消された薄暗い部屋に、ひとりの男性社員が座っていた。
◯「二宮さん、これ営業の出張費の支払いお願いします。」
背中を丸くしてコッペパンをかじりながらスマホゲームに熱中していた経理課の二宮さんは、眼鏡越しにチラリと私を見ると、アゴでデスクの上に置かれたトレイを指した。
二宮「そこ入れといて。」
無愛想なその態度に面食らったが、言われるまま伝票をトレイに入れた。
◯「よろしくお願いします。」
二宮さんは私の声など聞こえていないように、ゲームを続けた。
経理課を出るとき、女子社員が戻って来た。
私は念のために女子社員にも伝票のことを伝えた。
「オッケー、昼イチに処理しとくね!」
明るく答えてくれた女子社員が部屋の奥にひとり座る二宮さんに気づいた。
女子社員は私の耳元でささやいた。
「にのみー、暗いでしょ? 昼休みはいつもひとりでゲームやって。本当にオタクなのよ。あれ、きっと童貞よ。」
私は、何て答えてよいかわからず、苦笑いを返して経理課を出た。