テキストサイズ

レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第9章 コッペパン【和也】

自分のデスクに戻ると、同期のサキが駆け寄って来た。

サキ「知ってる!? 次の社内レクの行き先!」

◯「どこなの?」

サキ「ディスコだって! ほら、最近、バブルブーム再来で駅前にできたでしょ?」

◯「ああ、うん。」

サキ「部長がバブル世代だからさ、勝手に決めちゃったのよ。もう最悪!」

◯「いつもなら、ボウリングとかなのにね。」

おしゃべりに夢中になっていると、始業のチャイムが鳴った。

サキもデスクに戻り、午後の業務がスタートした。

しばらく仕事をしていると、私の後ろでコツコツと音がした。

振り向くと、二宮さんが私の後ろのスチール棚を指先で叩いていた。

二宮「出張費。」

二宮さんは、封筒に入ったお金を渡しに差し出した。

◯「あ、ありがとうございます。」

二宮さんは、私がお礼を言い終わらないうちに立ち去った。

サキ「何、あれ? 感じ悪い。さすが魔法使いにのみー、ね。」

サキがその様子を見て小声で言った。

◯「魔法使い?」

サキ「男は30歳過ぎても童貞だと魔法使いになるらしいわよ。」

◯「え、そうなの…?」

私は、部屋を出て行く二宮さんの後ろ姿をじっと見つめた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ