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第11章 かわいいひと〜母ちゃんの入院〜
先生は廊下のイスに座ってた。
俺が出て来て目が合うと口にしていたパックのジュースのストローを離しながら立った。
先生…
どうして…?
「大丈夫か?」
……
「…うん。」
俺が泣きそうな顔をしたんだと思う。
先生もつられそうに眉根を寄せてから俺の手をとって、ぎゅっと握る。
それでまた泣きそうになるから困ったもんだ。
「大丈夫だよ。さっき翔ちゃんから聞いた。お前も看護師さんの話、聞いたんだろ?」
頷くと、ニコって笑って、
「だったら、もうそんな顔すんな。
俺も翔ちゃんもいるから。
な?」
「うん。」
頭を子供にするみたいに撫でて俺の顔を覗く。
恥ずかしいけどすごくうれしいから…
がんばって泣きそうな顔を引っ込める。
買い物頼まれた、って言うと、付き合う、って一緒に売店へ。
化粧水と歯磨きセットを買ってから母ちゃんの勤め先へ電話をする。
直属の上司に繋いでもらい経緯を話すとすごく心配してて。
「明日には母から電話をすると思います。」
そう言うとくれぐれもお大事に、と最後まで母ちゃんの体を気遣ってくれていた。
有難いな。
それを先生に言うと、日頃のお母さんの仕事ぶりや人柄だ、って褒めてくれたから、もっとあたたかい気持ちになった。