テキストサイズ

異彩ノ雫

第34章  十ノ月 ②




秋の陽をまとい
漆黒のタキシードは
かぐわしい時を思い出させる

上質のシルクの滑らかさ
胸ポケットには純白のチーフ
襟元の
小粋なパールのピンブローチは
過ぎた日の恋の形見か
はぐらかしては笑うあなた…

肩口に触れれば
頬を寄せて踊った夜が甦る

風が吹くよりも早く
時は過ぎてしまうものだと
気づきもせずに過ごした日々…

ぬくもりの消えた今
胸にあの夜のワルツが流れ始める







【ワルツ】



ストーリーメニュー

TOPTOPへ