
異彩ノ雫
第114章 恋文 (六)
昔
ただ一度の出逢いで
その座に背を向けた王がいたように
あの日のあなたの微笑みが
私の世界を変えてしまいました
今
想いのたけをこめて言葉を紡ごうとしても
心の震えがそれを許さないほどに
この想いを伝えるには
言葉しかないというのにどうしたらいいのでしょう
月明かりの下ため息がもれるばかりです
ああ
これは
あなたへ告げる言葉はただひとつだけということ、なのでしょうか
ならば私は騎士の心をもって
生涯で初めての言葉をあなたに贈りましょう
愛しています…
(了)
