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異彩ノ雫

第123章  Diary ~異国の海に君を想う日




海辺の街は朝が早い

濡れた髪のまま
ホテルの窓を開け放てば
胸の中まで染まるほどの碧い海

ねえ君、今日の海はご機嫌だ…

僕はそっと呼びかける


昼の喧騒と強い日差しの中
シャッターを切り続けながら
異邦人の寂寥はふいに込み上げ
そんな時は
迷子のように立ちすくんでしまう

それでも
夕陽が海にとける頃には
浜辺を歩く恋人たちのシルエットに
過ぎた日々を重ねては
いつかの幸せをなぞっている

僕たちは最高の恋人同士だった…



けれど
夜の海は
涙を湛えた君の瞳を想わせて
心がひとしきり騒ぎたつ


忘れようとするほどに
そう、日を追うほどに
君が恋しい
ただ 恋しい…


どうか もう一度
君をこの手に抱かせてほしい
この海を、ふたりで見たい

忘れることなどできはしない
君だけが
僕の愛する人だから…







(了)


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