ただあなただけを見つめる
第5章 優しい時間
しばらく泣いて、我に返る。
暁の黒いTシャツには大きなシミが出来ていた。
「ご…ごめん…。
びしょびしょにしちゃった。」
パタパタと手で濡れた暁のTシャツを扇ぐ。
恥ずかしい…。
「……。」
私は顔を隠すように俯いた。
ウォータープルーフだから化粧は落ちていないと思うけど、
目がきっと腫れてるはず。
しかし暁が私の顔を持ち上げる。
「ちょっとやめてよ。
今酷い顔してるんだから。」
私は頬に触れる暁の手を引きはがそうと手をかける。
それでも暁は私の顔を上に向ける。
まったくなんなのよ…。
「可愛い…。」
「はぁ?」
いきなり何言い出すんだ。
と暁を睨む。
暁はクスッと笑うと、顔を近づけてきた。
「……。」
私はゆっくりと目を閉じる。
そして二人は唇を重ねた。