ただあなただけを見つめる
第16章 花火
「さ、早く食おうぜ!
俺超腹減り!!」
暁に手を引かれ橋の下に座る。
コンクリートがひんやりと冷たかった。
「祭の食いもんってさ、買う前はめちゃくちゃおいしそうなくせに、いざ買って食ったら、そうでもないよなー。」
「そう?私はわりと好きよ。」
暁のタコ焼きを一つ奪い、頬張る。
祭り独特の味がした。
「花火まだかなぁ」
「あと5分くらいじゃね?
てか…大事な話していい?」
「大事な話…?」
少しだけ不安な気持ちになる。
“大事な話”なんて言われたらネガティブな話しか出てこなくて……
「何で泣きそうな顔してんの(笑)」
「……してないし。」
「ま、泣くかもしんないけど」
なにそれ
何なの?
「恥ずかしいから…夏帆、俺に抱きしめられてて?」
「え?」
ひょいと膝に乗せられ、暁に後ろから抱きしめられる。
私のお腹に回る手は少しだけ震えていた。