
Liar Game 〜1×5〜
第2章 きっかけ
櫻井さんの部屋に入ると、案外綺麗だった。
掃除していないって言っていたからてっきり物やゴミで溢れかえっているのかと思ったけど……
あっ、隅っこの方にホコリが…これは見なかったことにしようかな。
今日の料理は肉じゃがとブリの照り焼き…あとはほうれん草のおひたしと豚汁。
全部クックパッドから教わった手順で作る。
その間、櫻井さんは自分のお部屋でお仕事をしている。
家に帰ってきてからもお仕事するなんて……
お仕事の疲れを吹っ飛ぶくらい、美味しいもの作らないと!
僕はブリの照り焼きの味付けをちょっと甘めにした。
疲れた時は甘いものを食べると元気が出るっていうから…
そして料理を作り終えると、僕は櫻井さんを呼んだ。
お仕事しているから、部屋に入らず外から声をかけた。
出来上がった料理を見た櫻井さんは驚いていた。
想像してたものよりもまともだったからかな?
僕…不器用だから包丁使うの苦手。
でも一生懸命作ったから……
櫻井さんは僕が作ったご飯を美味しそうにぱくぱく食べてくれた。
そう…これが僕にとって一番の幸せ。
僕が作った料理を美味しそうに食べてくれる姿を見るとすごく嬉しくなる。
あっ、ご飯粒ついてる。
それくらい夢中になって食べてくれるその姿に…思わず見惚れちゃった。
でも、櫻井さんには彼女さんがいる。
彼女さんは家に来てご飯作らないのかな…
思いきって聞いたら、仕事が忙しくてあんまり彼女さんと会えていないんだって。
寂しいよね…彼女さんと会えないなんて……
でも、来週の木曜日に久々に会うって聞いて、僕はホッとした。
よかった……彼女さんのことも大切にしているんだ。
まともな恋愛をしたことがない僕にとって、櫻井さんがものすごく羨ましかった。
櫻井さんも彼女さんも…幸せなんだろうなぁ……
食器を洗っている時、ふと視線に気づいて後ろを見ると、櫻井さんと目が合った。
思わず手を振っちゃったんだけど…櫻井さんも僕に手を振って笑ってくれた。
こんな僕に微笑んでくれるなんて、本当に優しい人なんだなぁって思った。
