大切な人へ
第3章 気付き
「本当にもぅ帰っちゃうの?」
紗羅が寂しそうに言って申し訳なくなるが
今日のバイトがどうしても休めなかった
ごめんね と小声で3人に挨拶をして
こそっとホールを抜け出した
別館から本館に入ったところで
『あっ…』 「あれ…?」
鈴木先生にばったり会ってしまった…
彼は授業の時もフリートークはほぼなし
淡々と進めるタイプで
挨拶しかした事が無かったが
「リレーのメンバーに打ち上げ
誘われたんだけど 帰るの?」
『はい…どうしてもバイト休めなくて
リレーではお世話になりました!
朝練まで来てくれて 勝てたの先生のお陰ですね 』
「いや…メンバーが頑張ったからだよ 笑
藍野さんもすごく応援してくれてたから
みんな張り切ってたし!お疲れ様 」
そう言って目を細めて優しく笑った…
ドクン…
私はその瞬間体が固まった…
「帰りは自転車?」
先生の声にハッとする…
『あ…はい!じゃ行きますね!さよならっ』
手を上げて挨拶を返してくれた先生を
まともに見れず ダッシュで自転車の所まで行った